ちょっといいお話 Vol.10 -『修羅場で掴んだ幸せの方程式』

こんにちは、くらです。

「ちょっといいお話(Vol.10)」です。

お時間のあるときにでも読んでいただけたら嬉しいです。

今回は、
デンソー技術センターの常務を経て、
現在技術教育者としてご活躍されている方のお話です。


「修羅場で掴んだ幸せの方程式」 技術教育者 今枝  誠
月刊「致知」2010年11月号より抜粋


ある日今枝さんが家に帰ってみたら、
奥様が散らかり放題の部屋の隅で放心状態で座っていた。

「しばらく家を出たい」と奥様は仰って、
家を出たそうです。

奥様が家を出て行ってからは、
大変な生活が始まりました。

会社で激務をこなしながら家族の食事や弁当を作る、
ということだけだはなく、
能力に溺れ、
自分はすべて正しいと思い込んでいた今枝さんだったが、
上に報告もせずにどんどん前へ進む。

相手の気持ちがまるで見えていなかったため、
役員との関係もおかしくなり、
部下もみんな離れていったそうです。

悪いことは重なります。

今枝さんは出張先のタイで、
疲労による不整脈で倒れ、
会社も2ヶ月休むことになった。

体力、
気力、
知力、
いずれも萎えてしまった。

その矢先で、
今度は父親が胃がんで倒れ、
帰らぬ人となった。

その時、
ガリガリに痩せた自分を心配した母親から言われたことが、
今枝さんの心に刺さりました。

「誠、
 あんたはこれまで感謝の心で人に何かしてさしあげたことはあるかね」

今枝さんは自分がそれまでいかに仕事に邁進し、
会社に貢献してきたかを懸命に訴えたそうです。

「そんなこと当たり前じゃないの!
 本当に感謝の心があるなら、
 一度でも会社で皆さんの机を拭いてあげたことはあるの」

それまで、
自分はこんなに頑張ってきたのになぜ酷い目に逢うのかと悩んできたけれど、
周囲で支えてくれる先輩や部下に感謝の念を抱いたことはなかった。

心の霧がスカッと晴れて気持ちが楽になったそうです。

デンソー技術センターの常務になった平成十七年、
今度は膀胱がんの宣告を受けたそうです。

3回再発し、
手術も4回受けたそうですが、
いい薬にもめぐり合って、
現在は異常はないといわれているそうです。

その後、
別居して3年後正式に離婚していた奥様も、
最後の手術の時に見舞いに来て、
その後毎週末には一緒に過ごすようになったそうです。

(以下本文)

今枝さんは、
心が変われば人生も変わると仰ってます。

「実際に家庭でも職場でも人間関係がよくなり、
 心穏やかで体調もよく、
 毎日が大変充実しています。

 心が変われば人生が変わるだけでなく、
 イノベーションも変わるのです。

 人づくりというのは自分づくりだと思います。

 心を変え、
 自分を磨けば、
 人づくりもものづくりも上手くいき、
 会社も成長する。」

入院されていたとき、
同じ病室にいた3人の方から言われたそうです。

「今枝さんはいいね。
 手術が受けられるし、
 いずれ退院できる」

そのうちの一人は三ヵ月後に亡くなられたそうです。

その方は、
亡くなられるまでお子さんにメールを打ったり、
今枝さんにお見舞いの花の育て方を教えたり、
看護師さんに冗談を言って楽しませたり、
残り少ない命を最後まで精一杯生き抜いたそうです。

「私は膀胱がんになったけれども、
 まだこうして仕事をさせてもらえる。
 そう思うと感謝で心は満たされ、
 生きている間に少しでも世のため、
 人のためにお役に立ちたいと思います。

 マイナスの心も、
 そのように感謝を通じてプラスに転じることができるのです。」

「いま、
 時代は大きな転換期を迎えており、
 過去の成功体験が通用しなくなりました。

 だからこそ、
 個人も会社も軸となるしっかりした価値観を持ち、
 自分を磨いて社会に貢献していくことが大事です。

 その姿勢を貫いてゆけば、
 必ず幸福や繁栄がもたらされます。

 私は研修を通じて、
 これからも感謝や心づかいの大切さを後進に伝え続け、
 彼らが会社に画期的なイノベーションをもたらし、
 新時代を担う人材に育ってくれることを心から願っています。」


「修羅場で掴んだ幸せの方程式」 技術教育者 今枝  誠
月刊「致知」2010年11月号より抜粋

最近、
こういうお話を読んでいて、
何度も気づかされることがあります。

幸せな成功を収める人は、
ほとんどの方が同じような思いをしているということです。

逆境にさらされて、
どん底に落ちてから、
必ず誰か助けの手を差し伸べてくれる。

その後も、
また上に登ったと思ったら、
思いがけないことで下に落ちる。

それでもまた、
思いもよらない助けを得られる。

そういうことの繰り返しで、
最後に必ず出てくる思いが、
「感謝」という言葉です。

なにを幸せといい、
なにを成功とするか、
これも人によって違ってきますが、
幸せも成功も、
自分の周りにすでにある、
といこともよく聞きます。

それが分かるまで、
我々は色々、
何度でも苦労を繰り返して、
そしてだんだん感謝の心が芽生えながら、
そのときやっと、
周りにある幸せに気づいていくのかもしれません。

そして、
苦労が大きいほど、
周りにある本当の幸せへ、
自分を前へ導いてくれる人や環境のありがたさに、
気づく感性が磨かれるのかもしれません。

今苦労が大きくても、
必ずそれがいつか自分のためになると信じることができるなら、
人生ももっと豊かなものになる気がします。

今回もお読みいただき、
ありがとうございました。